英語能力を伸ばそうと思うと色んな人の研究結果などを見て、これもあれもやってみなきゃって思っちゃいます。
そうですね。
研究結果をもとに様々な勉強方法が推奨されているから、どれが自分のスタイルに合う勉強法なのかよく分かりませんよね。
今回は言語学者であるスティーブン・クラッシェン氏が提唱した理論が英語能力にどんな影響を与えるのかを分かりやすくに説明していきましょう。
スティーヴン・クラッシェン氏はどんな人?
スティーヴン・クラッシェン氏は第二言語習得論、バイリンガル教育論、読書教育論に貢献した南カルフォルニア大学の名誉教授です。
第二言語習得論については、多くの仮説を提唱しているんだよ。
凄いですね!どんな仮説を提唱しているのか、もっと知りたいです!
それでは、次の章で出来るだけ分かりやすく説明しましょう。
クラッシェン氏のインプット理論は5つの仮説から成り立っている
スティーヴン・クラッシェン氏は第二言語習得について、5つの仮説を提唱しています。
- 習得学習仮説(acquisition-learning hypothesis)
- 自然習得順序仮説(natural order hypothesis)
- モニター仮説(monitor hypothesis)
- インプット仮説(input hypothesis)
- 情意フィルター仮説(affective filter)
わぁ~、難しそうな内容になりそうですね。
理解できるかなぁ~?
大丈夫、出来るだけ簡単に分かりやすく説明していきます。
習得学習仮説(acquisition-learning hypothesis)
クラッシェン氏は「習得」と「学習」は第二言語習得にそれぞれ異なる影響を与えると述べています。
そして、言語を「学習」するよりも「習得」する事が非常に重要である事も述べています。
えっ!?習得と学習って一緒の物のように思えますけど、違いますか?
確かに学習者からすると、学習するから習得できる感じですよね。
クラッシェン氏が言う「習得」とは、赤ちゃんが両親の声を聴きながら自然と言語を喋れるようになる過程のように、文法やルールすら気にせず無意識で習得した知識の事です。
あなたが習得している現在の英語能力で意思疎通を続ければ、第二言語習得に繋げられるともクラッシェン氏は説明しています。
ふむふむ。
次に「学習」とは、学校で学ぶ英語のように文法や文の正しい構成などを意識的に学んでいく事を指しています。
そして、学習で得た知識は習得した第二言語を使用するまではアウトプットされないと言われているのです。
少し分かりやすくする為、例を挙げましょう。
例えば、あなたがすでに習得している英語能力で、
「I go to school, tomorrow.」
と伝えようと思っています。
ここでもしあなたが、文法の未来形に関して学習していれば、伝える前に間違いに気づく事ができます。
「will」が抜けて時制がおかしくないか?「will」をどこにつけて修正する?などが脳内に巡り、最終的に「I will go to school, tomorrow.」と正しい発話が可能です。
このように「学習」は、あくまで習得した知識の修正を行うものとクラッシェン氏は述べており、「学習」では第二言語習得は出来ないとも言っています。
あなたがさっき言った学習するから習得できるのでは?と言う批判する意見も多く、この理論が正しいとは一概には言えないようです。
自然習得順序仮説(natural order hypothesis)
この仮説には学習者が効率よく文法を学ぶべる順序を示したものです。
学びやすい文法から順序良く学習する事で、難しい英文法も理解できるようになるプロセスですね。
学校で習ってきた順序ではダメなの?
学校で習ってきた順番で何も問題ありませんよ。
1.進行形(ing)・複数形(s)・be 動詞
2.助動詞・冠詞
3.不規則動詞の過去形
4.規則動詞の過去形・三単現の s ・所有格の s
クラッシェン氏は、このような順番で学習することを推奨しています。
※principles and practice in second language Acquisition引用
確かに進行形やbe動詞などは理解しやすいけど、その後すぐ冠詞は日本人には難しいですよね。
学習者の第一言語(母国語)の違いで順序も変わるようなので、心配しないで。
日本人は「Be動詞」「連辞b」「所有格のs」「進行形ing」「複数形s」「三人称単数現在のs」「不規則動詞過去形」「冠詞」の順序で学びましょう。
※https://ushikubou.com/english-natural-order-hypothesis 参照
モニター仮説(monitor hypothesis)
モニター仮説はあなたが英語話したり、書いたりする直前に英語の正確さや間違いを修正する機能の事です。
前記した習得学習仮説の学習を補足した仮説ですね。
モニターっていうのは、脳内で起こる機能ですか?
その通り!
モニター機能は意識的に得た「学習」知識を脳内でアウトプットする機能です。
簡単な例を挙げると、
- I go to a store yesterday.(習得している英語で発話の準備)
- 脳内(学習した知識のアウトプット)
- I went to a store yesterday.(修正して発話する)
脳内で発話しようとする英文が、学習した知識をもとにモニタリングされ修正されているのです。
確かに英語を喋ろうと思うと、正しい文法かなぁ~なんて考えますよね。
そうです!それがモニター機能です。
しかし、クラッシェン氏はモニター機能はタイプによって英語能力向上を妨げる物でもあると述べています。
それを物語る3つのタイプがこちらです。
- Monitor Over-Users
- Monitor under-users
- Optimal monitor-users
Monitor Over-Users
このタイプはモニターし過ぎてる人ですね。
つまり正確さを追い求め過ぎて、発話する事が出来なくなっている状態です。
日本人の典型的形態と言えます。
これ私です(涙)
Monitor under-users
このタイプはモニター能力自体が弱い人です。
学習で得た知識が乏しく、アウトプット事態出来ない状態と言えます。
学習知識が無ければ、間違った知識を修正できないってことですね。
そうですね。
間違っていても文法がめちゃくちゃでもガンガン喋る人などが、このタイプにあてはまります。
私が海外に留学していた時は、こんな感じの外国人が多数いましたよ。
Optimal monitor-users
このタイプの人は発話とモニター機能がバランスよく働いている為、機能が英語能力向上の妨げになることはありません。
話ながら自分をモニターできる余裕があって、会話に自信を持っている人ですね。
このタイプを目指さないといけないですね!
インプット仮説(input hypothesis)
この仮説は、自分のレベルより少し難しいぐらいで学ぶ事で、言語能力が向上すると言う仮説です。
しかしこのインプットで重要なのは、ただインプットをするのではなく理解可能なインプットでないと意味がないということです。
少し難しいけど、理解可能な範囲で習得していくのが良いという事ですね?
そのとおり!
クラッシェン氏はインプット仮説の3つの推論を説明しています。
- 発話の訓練だけでは言語能力向上には繋がらない。
- 理解可能なインプットを十分に行えば、習得者は次の習得段階に進む。
- 理解可能な順番で無意識的に英語を習得することが重要
クラッシェン氏は発話自体の練習では言語能力は向上しないと述べており、発話は習得した言語の結果的な出力であると説明しています。
理解可能なインプットを自信で続ければ、次の習得レベルに進めるという事です。
情意フィルター仮説(affective filter)
ポジティブな考え方が言語習得向上に役立つという仮説です。
クラッシェン氏は感情的な要因が第二言語習得にどのように影響するかを研究し、3つの心の要素を説明しています。
- Motivation(動機付け)
- Self confidence(自信)
- Anxiety(不安)
「Motivation」と「Self confidence」に関しては、言語を習得する動機・自信があれば言語習得に対して脳内で受け入れの準備が進み習得しやすくなります。
クラッシェン氏は習得に良い状態を情意フィルターが低くなると言っています。
反対に「Anxiety」不安があると、失敗したら笑われるや失敗したくないなどと考えてしまい言語習得にストップをかけてしまいます。
不安定な状態を情意フィルターは高くなると示しています。
日本人は特にこの「Anxiety」を拭う事が必要かもですね。
まとめ
クラッシェン氏のインプット理論について説明してまいりました。
分かりやすく説明していただき、本当にありがとうございました。
また英語について難しい問題があれば、聞いて下さいね!
最後にまとめです。
第二言語習得論、バイリンガル教育論、読書教育論に貢献した南カルフォルニア大学の名誉教授です。
- 習得学習仮説(acquisition-learning hypothesis)=「習得」と「学習」は異なるもの
- 自然習得順序仮説(natural order hypothesis)=自然の習得には順序がある
- モニター仮説(monitor hypothesis)=学習した知識は発話直前でアウトプットが可能
- インプット仮説(input hypothesis)=理解可能なインプットを続ける事で次の段階へ進める
- 情意フィルター仮説(affective filter)=不安が言語習得の妨げになる
インプット理論は参考になる点もありますが、曖昧で具体性に欠ける部分もあり一概にはクラッシェン氏の理論が正しいとは言いにくいのが現実です。
ただ英語を学ぶ上で知っておいて損のない理論ですし、学習者の経験に基づいてクラッシェン氏の正論性を確認していくのも一つです。
言語習得における新しい視線もこういった理論をもとに生まれるのでしょう。
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